平成21年05月26日
「学芸員のぶらり遺跡散歩-清盛の墓所をもとめて-」
舞子・山田川界隈を散策
学芸員が、清盛の墓所を探しに現地に飛び出しました。さて、その成果はいかに・・・
(14時~17時の3時間、約4キロのコース)
| 内容 | 「平清盛は仁安四(1169)年から約11年間、福原(現神戸市兵庫区)に常住し、墓も神戸市内にある」 5月9日にあった高橋昌明先生(神戸大学名誉教授)のご講演で、地元の人もあまり知らない事実が披露された。清盛の墓そのものは見つかっておらず、いくつかの説もあるが、高橋先生は『吾妻鏡』の「遺言によって播磨国山田の法華堂に遺骨を納めた」という記事に、もっとも惹かれているとのことであった。 「それならば清盛の墓を探しに行こう!」 石野館長のいつもの思いつきの一言がきっかけで、あてのない「清盛の墓探しツアー」が実現した。 参加者は高橋先生と、県立歴史博物館の前田さんと橋村さん、姫路文学館の杉田さん、それと考古博物館の中川の5名。中世史、美術史、文学、考古学という多彩な顔ぶれで、5月20日(水)の昼下がり、JR舞子駅に集合した。 ◆ ◆ ◆ 「播磨国山田」というのは、西舞子の山田川沿いに当時あった「山田領」のことで、そこには清盛の別荘があり、高倉上皇も立ち寄ったとの記録がある。『高倉院厳島御幸記』には「庭には黒き白き石にて霰の方に石畳にし、松を葺き、さまざまの飾りどもをぞしわたしたる」と表現され、念入りに結構された邸宅の様子がうかがえる。日宋貿易に生涯を賭けた清盛にとって、明石海峡を見下ろすこの地こそが墓所にふさわしい、というのが高橋先生の持論である。 とはいえ、このあたりはすでに開発が進み、山の上まで住宅・マンションが立ち並んでいる状況で、もちろん清盛の墓の伝承地もない。まったく雲をつかむような話だが、清盛の別荘およびおそらくそこに建てられた法華堂ならば、さだめて景勝の地であったにちがいない、という仮定だけを頼りに歩き始めた。 ◇ ◇ ◇ とりあえずは山田川の河口を目指して、2号線を西へ。いきなり道沿いに現れたのは舞子砲台跡。幕末に明石海峡を通過する外国船を砲撃するために、対岸の「徳島藩松帆台場」とともに築造された砲台場で、発掘調査された石垣が公開保存されている。 ◆ ◆ ◆ 2号線をさらに西へとると、国道の北側に「舞子延命地蔵」の看板が。背丈は1mをゆうに超える大きなお地蔵さんが鎮座して、周りにはなぜかたくさんの木槌が奉納してある。願い事を書いた木槌で台座を叩いてお祈りをするらしい。 ◇ ◇ ◇ そこからは国道を外れて旧道に入る。集落が東西に細長く延びているのは海岸砂堆に立地しているからで、ほぼ中央に位置している「舞子六神社」の境内をみると、かつての砂堆はずいぶん盛り上がっていたものだと分かる。それでもあまりに海に近すぎて、清盛の館にはそぐわない。 ◆ ◆ ◆ 山陽電鉄西舞子駅の地下道をくぐって線路の北側へ。砂堆の後背湿地を越えた山側に高台はないかと見渡したが、家が建て込んで見通しがきかないものの、それらしい地形は見当たらない。懐かしい感じの商店を横目に、狭い路地を抜けて山田川のたもとに出た。 『平家物語』に「やまた浦」つまり港でもあったとされるが、山田川は狭隘な谷川で、とても船が遡上できるような余地はない。水流もほとんどなく、川尻は水たまり状態である。大船の接岸はとても無理で、河口に小舟をもやう船溜まりがあった程度だろう。それでもこのあたりで上陸したとすると、右岸側に手頃な高台がのぞめる。 ◇ ◇ ◇ かつての尾根線伝いの道をたどると、高層住宅に囲まれて、「きつね塚古墳」がひっそりとたたずんでいた。墳丘は二段築成の円墳で、二重の周壕をもち、横穴式石室から金銅装の馬具などが出土している。五色塚古墳よりは百年以上新しい、明石海峡の首長墳である。もし眺望が許せば、瀬戸内海を一望に見晴らせる絶好の場所といえる。しかし発掘調査されたのは、古墳と弥生時代の高地性集落で、中世の館は見つかっていない。 やはり手がかりはないように思えたが、道の途中に気になる祠が1つ。額には「塩森大明神」とあり、小さな祭壇と「開運 鹽森大明神」と刻まれた新しそうな石碑。「シオモリ」って、2字違いで韻をふむだけで、意味があるのかどうか・・・ ◆ ◆ ◆ だんだん訳が分からなくなってきたけど、清盛の館があったとすると、立地の点からも、船着きとの関係からも、この丘陵のどこかにあってもよかろう!ということで、一同の意見は一致をみた。「清盛もこの景色を眺めたのだろうか(海峡大橋はないけれど)」と思いをはせながら、浜で記念撮影。 収穫があったかどうかは微妙なところだが、問題意識をもって現地を歩いたという満足感を胸に、約4kmの行程を終えて、夕暮れ前に舞子駅前にゴール。ちょうど良い頃合いで、慰労の夜は更けていく・・・
|
|---|















