25.甲冑(かっちゅう)

茶すり山古墳の甲冑 (<加藤2010>より)

 

甲(よろい)と冑(かぶと)の両方とそれぞれの付属具を総称して甲冑(かっちゅう)と呼ばれている。

古墳時代中期を代表する副葬品の一つで、定型化したものはフレーム(帯金:おびがね)で囲まれた内側を複数の鉄板(地板)でうめるようにして製作されている。鉄板の形状は「方形板」「長方板」「三角板」「竪矧板(たてはぎいた)」「横矧板」などがあり、また、鉄板どうしを綴じる方法に「革綴」「鋲留」がある。この鉄板形状と綴じる方法を組み合わせて、「三角板革綴短甲」「横矧板鋲留短甲」などと名称が与えられる。

さらに、冑は形態の違いから「衝角付冑(しょうかくつきかぶと)」「眉庇付冑(まびさしつきかぶと)」の2者があり、甲と同様、板の形状と綴じる方法の名称を使って「三角板革綴衝角付冑」などと名称が与えられる。

 

県内では、雲部車塚古墳(丹波篠山市)から冑と甲の5個体ずつ以上、茶すり山古墳(朝来市)から冑と甲の2セットが出土しており、1人の被葬者に対して数多い副葬例として注目される。

なお、畿内中心部で甲冑が大量に副葬されている古墳として、大阪府黒姫山古墳(冑24個体、甲24個体)、大阪府野中古墳(冑11個体、甲11個体)、福岡県月岡古墳(冑8個体、甲8個体)、奈良県円照寺墓山1号墳(冑5個体、甲8個体以上)、大阪府七観古墳(冑7個体以上、甲7個体以上)が知られているが、雲部車塚古墳はそれに次ぐ量であり、京都府久津川車塚古墳(冑5個体以上、甲5個体以上)と並ぶ。

 

こうした甲冑の大量副葬は、古墳時代中期において軍団が存在したことの証しとされている。

 

<参考文献>

加藤一郎2010「茶すり山古墳出土甲冑の特徴および構成とその意義」『史跡茶すり山古墳』兵庫県教育委員会

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